駒橋宿は、猿橋宿より二十二町の距離にあったが、本陣も脇本陣も無く、
旅籠は四軒のみであった。
宿場は十一町弱と長いのだが、家と家との間に田畑があるような寂しい宿場だったようである。
国道と中央本線の工事で、宿場はかなり壊されたが、
国道から外れた地区は古い家が残っていて、街道らしい静かな佇まいを見せている。
猿橋宿から駒橋宿
国道20号を進んでいくと、右側の壁に大きく、
「紅富士太鼓道場」と書かれた白い大きな建物が現れた。
ここで所蔵の太鼓はギネスに登録された大太鼓ということである。
ここから四百メートルは、右側に家が無く、眼下に流れる桂川が良く見えた。
道端にある「青面金剛庚申塔」は 十返舎一九の「諸国道中金之草履」の挿絵に使われたと伝えられるものである。
宮下橋南詰交差点の先の円行寺の隣に三嶋大明神があり、
小さな境内には屋根付きの土俵があった。
この角はJR猿橋駅入口で、左へ百五十メートル入ったところにJR猿橋駅がある。
駅の裏からシャトル桂台というケーブルカーのような乗り物が山上の「桂台住宅地」まで走っているのが見えた。
国道が左にカーブするところの右側に「阿弥陀寺」の標石が立っている。
第三自治会防災倉庫の前に、「一里塚」の標柱があり、
標柱には「猿橋」と記されているが、ここは二十三番目の「殿上一里塚跡」である。
百メートル先の右側には大きな時計の付いた山梨中央自動車販売があるが、ここに
「甲府43km、勝沼28km」の国道標識があり、
国道の識には「駒橋発電所」への案内標識も付いていた。
駒橋宿
甲州街道はここで国道と別れ、右に道に入る。
道は左右に曲がりながら進み、江戸時代は駒橋宿、今は駒橋3地区に入る。
右側に駒橋発電所の放水路、そして、桂川、
その向こうにそびえるのが岩殿山という雄大な景色である。
「 駒橋宿は町並み十町五十四間と長かったが、 旅籠は四軒のみの本陣も脇本陣を持たない寂しい宿場で、 全部で八十軒程、人口も二百六十人程と少なかった。 家と家との間に田畑があった、といわれる。 」
大月駒場郵便局などの十軒程の集落があり、
その終わりの右奥に、明治四十年(1907)に建設された東京電力駒橋発電所がある。
右側の東京電力の社宅への道の方が広く、道を間違えそうになるだが、
ここは左の道をいく。
甲州街道は発電所建設で一部消滅したが、
左の導水管の脇の細い道を上り、JR中央線の「第五甲州街道踏切」を渡って、
国道に出る。
国道に出るすぐに右側に入る道があるので、その道に入っていく。
この道は三百三十メートルと短いが、国道から外れたおかげで、味わいのある建物が残っている。 出口付近の右側に厄王大権現がある。
拝殿脇には大月空襲の犠牲者の慰霊碑があった。
国道に合流する手前に、文政五年(1822)建立の「秋葉大権現」と刻まれた、
常夜灯があった。
国道に合流すると、両側の門柱に橿屋(かしのや)と書かれた家があった。
甲州街道はデイリーヤマザキ大月桂川店の辺りから、再び右へ入って行くのだが、
今は道が完全に消えてしまっているので、このまま、国道を歩く。
国道を高月橋入口交差点まで歩くと、左側に三嶋神社(三嶋大明神)がある。
「 三嶋神社は、奈良時代の大同元年(806)に、 伊予国の大三島大山祇神社より勧請されたと伝えられる古い神社である。 境内には大槻回四十五尺と書かれた碑があるが、大山祇神社より勧請された時、 四本の大槻が植えられたという伝承が残り、 その大槻が大月の名前の由来と言われている。 江戸時代には街道に面していたため、旅の安全を祈願する人で賑わったという。 」
三嶋神社の奥(南南東)にある光照寺には猿橋町殿上から移された閻魔堂があり、
子育閻魔の伝説がある。
「 赤ん坊の時、閻魔様にさらわれたと思った子供が立派に成人して戻って来て、
親孝行する。 」 という話である。
高月橋入口交差点を右折して、高月橋へ向って進む。
正面には岩殿山が聳え、中央道はトンネルで抜けていくが
岩殿山は迫力あるその山容を見せ付けてくれる。
「 岩殿山は、修験者からの信仰を集めた霊山で、
武田二十四将の一人、小山田信茂の居城の岩殿城があったところである。
岩殿城は、大永七年(1527)、郡内領守護小山田越中守信有により築城された城で、
標高637mの宝珠形にそそり立つ岩城の山頂部に、
本丸、のろし台、二の丸、三の丸があった。
その下に蔵屋敷や1000uもある馬場、更に炊事に用いた亀が池や、
人馬の水浴用とした馬冷やし池などがある。
この城の守りとして、西方城門には自然の巨石を切り開いて造った堅固な揚城戸。
東方には70mにおよぶから堀、大岩窟をそのまま城塞とした七社洞窟、新宮出丸などがある。 」
甲州街道は高月橋手前のJR跨線橋へは入らず、左折して側道に入り、
ふれあいの街さつき通商店街のアーチをくぐると、JR大月駅は右側にある。