東北自動車道の福島飯坂ICで降り、国道13号に入り、飯坂平野町交叉点を右折し、
県道3号を北上すると、飯坂線の医王寺前駅があり、そこを過ぎると小川橋があり、
橋を渡ると、花木坂駅・終点の飯坂温泉駅がある。
飯坂温泉は、摺上川の両側を中心に、温泉旅館が数十軒ある。
飯坂温泉に宿泊したのは芭蕉は宿泊して、のみや蚊にあちこち食われ刺されて、 ひどい目にあった様子が、「奥の細道」に書かれていたので、 どういう場所か興味があったからである。
「奥の細道」によると、「 芭蕉は、旧暦五月一日 (6月17日) 福島の宿を出て、
歌枕で有名な 信夫文摺 (しのぶもじずり) の石を尋ねて、しのぶの里を行き、石に対面して、
「 早苗とる 手もとやむかし しのぶ摺 」 と詠んだ。
(注) 文知摺石は、福島市山口字文字摺の文知摺観音の境内にある巨石である。
この上に、草木を置き、布を重ねて、上から擦って、信夫摺 の文様を染め出した、
と伝えられる。
芭蕉は、この後、阿武隈川の 月の輪 (福島市鎌田) の渡しを越えて、
「瀬の上」 という宿場(福島市瀬上町)に出た。
瀬上宿は、岩代国信夫郡奥州街道の宿場で、
阿武隈川水運の要所として、瀬上花街が存在する程、繁昌していたといわれる。
その後、向かったのは、医王寺(福島市飯坂町平野字寺前45)である。
瀬上宿から、県道155号を北西に進むと、医王寺に出る。
福島交通飯坂線の医王寺前駅からは北西方向。
「 この地は、当時、鯖野(佐場野)と呼ばれたが、
飯坂温泉を発見した鯖湖親王を祀る御宮があったので、
地域の名が、鯖野になったと言われている。
医王寺は、真言宗豊山派の寺院である。
平安末期の奥州藤原氏の郎党・佐藤元治とその子、継信・
忠信の菩提寺で、薬師堂には、弘法大師作と伝わる、薬師如来を安置する。 」
芭蕉は、佐藤元治の館跡とされる丸山を尋ね歩き、古寺(医王寺)で、
佐藤元治・乙和・継信・忠信の墓碑に詣でて、
継信・忠信の二人の妻女 の石碑に、
「 女ながら健気な振る舞いをしたという評判が、よくまあ後世に伝わった。 」
と、感涙にむせんでいる。
寺で茶を所望し、奥の細道には、 「義経の太刀や弁慶の笈を所蔵し、寺宝にしている。 」、と記し、
「 笈も太刀も 五月にかざれ かみ幟 」 という句を詠んでいる。
芭蕉の詠んだ 「 笈も太刀も 五月にかざれ かみ幟 」 の句碑は寺の境内にある。
芭蕉は、 「 その夜、飯塚にとまる。 いでゆ (温泉) あれば湯に入て、宿をかるに、
土座に筵を敷てあやしき貧家也。
ともし火もなければ、ゐろりの火かげに寝所をもうけてふす。
夜に入て、雷鳴雨しきりに降て、ふせる上よりもり、蚤・蚊にせゝられて眠らず、
持病さへおこりて、消入計になん。
短夜の空もようよう明れば、また、旅立ぬ。 」 と書いている。
芭蕉は、飯塚にとまる、と記しているが、曽良日記には飯坂と書かれている。
江戸時代までは、宿泊する場所と入浴する場所が分かれているのが一般的で、
内湯を持つ宿屋は少なかったようである。
湯治客は、思い思いの宿を選んで、その付近にある外湯で湯につかる形式であった。
芭蕉は外湯に入ってから、宿泊した宿探しに失敗したということだろう。
芭蕉は、翌朝、馬をやとって、奥州街道の桑折宿に出て、伊達の大木戸を越して、 白石の城下を通り、笠島郡に入っている。
飯坂温泉は、二世紀頃から出湯していたと伝えられる古湯で、
福島市の郊外の栗子連峰の麓にある。
日本武尊が東征の時、この地で湯治したという伝説があり、古くは鯖湖の湯と呼ばれていた。
宮城県の鳴子温泉・秋保温泉とともに、奥州三名湯に数えられる温泉郷である。
小滝・釜場周辺は温泉旅館が多くあるが、
小生が宿泊した摺上亭大鳥は、その上流の中ノ内にあり、畑が点在するところにあった。
「 摺上亭大鳥は、
JA ふくしま未来 飯坂南支店が経営する温泉旅館である。
摺上川に面して建つ数寄屋造りの湯宿で、宿泊すると、
JA経営なので、当地の牛肉や野菜を中心として料理が出てくる。
大浴場は全面ガラス張りの大きなもので、団体客が同時に入れる大きなもので、
人工大理石で造られた長方形の湯槽である。
大きさも20人は入れる大きなものだった。
露天風呂は県内産の鮫川石を使った岩風呂で、屋根が付いているので、
雨天でも入れるようになっていた。
自家源泉で、泉温は52、4度、 単純温泉のため、無色無臭の湯である。
地元の牛肉や野菜の食事で満足したが、
セントラルヒーチングで、温度調整が出来ず、蒸し暑いので、窓を開けて寝たら、
夜中に、蚊の音に目が覚め、芭蕉と同じ、気持になった。 」
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摺上亭大鳥 | 大きな室内風呂 | 屋根付露天風呂 |
飯坂温泉へは、福島駅から福島交通飯坂線に乗り、飯坂温泉駅下車。
東北自動車道福島飯坂ICから、国道13号・県道3号で、15分
訪問日 令和三年(2021)五月二十九日